新しい時代に生まれる小さな命が育つ頃、彼女たちが身軽であるように。
「この国は、女性にとって発展途上国だ」
ちょうど2年半ほど前に話題になったPOLAのCMを今更YOUTUBEで探して、
もう一度見てみた。
考えさせられるものがあった、だから私の小さな葛藤をシェアしたい。
入社して2年、あっという間だった。
後輩を幾人か迎え、指導もし、大きな仕事も任せてもらえるようになった。
今週もまた金曜日に、深夜残業でたまった仕事を片付けて帰ってきた。
昨年迎えた男性の後輩は、私と同じく内勤の多いチームに配属になった。
これまで私が引き受けていた部署のあらゆる庶務雑務をやっと引き継がせてもらえることになり、浮かれた日々を過ごしたのがちょうど一年程前。
あれもこれもやりたかった。四方八方から情報を集めたかった。
知りたいことや、確かめたいことが山ほどあったから、1日の時間のやりくりが大変だったのだ。
「やっと大きな仕事に集中できる」、早く着手したくてたまらなかった案件の事を考え、当時の私は浮足立った。
現在、私の元にはまだお茶くみの仕事が、コピー取りの仕事が、会議室の後片付けの仕事の依頼がくる。
「ではA君にお願いしておきますね」、「A君に引き継いだのです」と言い続けるのに、ほとほと疲れてしまった。
部長と談笑するA君を尻目に、金曜日も会議室の片づけに向かった。
毎度のことながら、ひどく惨めな気持ちになった。
何度経験してもぬぐい切れないこの惨めさ。
どうして自分は諦めて気持ちよく掃除や雑務ができないのか、分からなかった。
誰もいなくなった会議室で、冷たくなった湯飲みをかき集めながら、涙がにじんだ。
入社したばかりのころ、一生懸命に一つの仕事として取り組んだ小さな小さな雑務たち。
あの頃の私は、今もそれを請け負っているなんて想像もせずに、
「新入社員1年間の試練」として捉えていた。
散らばった雑務は、今も私に降りかかってくる。
1年前と大差なく、でも、惨めさだけは倍に膨らんだ。
私が女だから?
それともそんな仕事しか任せたくないような役立たずの部下だから・・・?
葛藤と自問自答を繰り返してきた。
後輩のA君の方が私より期待されているから?
でも、私だって精一杯やっている。結果だって残してきた。
部署での評価もいいはずなのだ。
だったらどうして?やっぱり私が女だから・・・?
言いようのない虚しさと、
”細かいところに気の利く女性社員”としての役割に落ち着けばいい、
という諦めの間で揺れ動き続けているが、今も葛藤はうまく消化できずにいる。
もうすぐ3年目の春がくる。
私はこれからも、お茶を汲み、コピーを取り、掃除をしながら、男性社員と自分の違いを噛締めて過ごすのだろうか。
この国に生きる女性には、まだ少しの足かせがかけられていると、そう感じる。
見えにくいものから、はっきり見て取れるものまで大小様々な足かせが、ヒールで駆け抜ける足元にカシャカシャと音を立てながら絡みついている。
その全てを取り払うのには途方もない忍耐強さが必要だろう。
しかしやはり、私の足首に今絡みついている足かせは自分の力で叩き割って見せたい。
お茶くみ、コピー取り、掃除、・・・・そんな小さな些細な足かせだとしても。
諦めず、さわやかに、卑屈にならず、叩き割りたい。
女として生きる自分を悲観する事も卑下する事もせず、
堂々と生きて、働いていくために、
今私が伝えらえる精一杯の言葉を探して日々を重ねていきたい。
小さく積み重ねられていく常識と慣例の名の元の不平等に、「NO」と言える強い女性になりたい。
今、平成を駆け抜けた女性たちにかけられた足かせを叩き割るのは、私たちの世代でなければならないはずだ。
それは、日常のすみずみにまで浸透した”常識”を変えていく根気強い作業だと思う。
新しい時代に生まれる小さな命が育つ頃、
彼女たちの足首に絡みつくもののない世界になっていることを祈って、
私はあと少しの勇気をもって戦いたい。
新しい年号が20年を迎える頃、
大きく育った私の後輩たちが、幸せな社会人になれるように。
もうすぐ訪れる新しい時代を、
日々の小さな積み重ねで晴れやかな時代へ変えていきたい。